[EnglishMonger 英語屋さん]

映画のタイトルも英語の勉強。この頃は洋画も昔ほどの人気がありませんが、とはいっても、英語を勉強するための良い材料です。今回は台詞の英語というのではなくて、題名に注目しました。邦題のつけ方を見ると、それはそれで、勉強になる面白い部分があります。原題と邦題が違うものを中心に集めて、記事にしました。

昔も昔、映画黄金時代。

昔の名画は直訳のタイトルもありますが、思い切った日本の配給会社の名付け仕事もあります。昔の名作を振り返ってみて、少し紹介してみます。

Gone With the Wind
Summertime
Waterloo Bridge
You Can’t Take it with You

私みたいな年配が、クラシックというと戦前から戦後すぐあたりの映画を言います。そのクラシック名画中の名画が、Gone With the Wind でしょう。邦題は「風と共に去りぬ」で、原題に近いですが、非常に詩的です。なんといっても「去りぬ」です。古文を知らない人からしたら、「去っていかない」って思うかもしれませんが、否定ではなく完了の助動詞「ぬ」です。そして、英語もgone という過去分詞が「完了」を表しています。It’s gone. といえば、「消えた」という意味です。「その風で消えた」という直訳ですが、上手な邦題の「風と共に去りぬ」です。

Summer Timeが「旅情」、Waterloo Bridgeが「哀愁」です。「夏の時間」と「ウォータールー橋」です。なんか漢字の力でロマンスを盛り上げようということでしょうか、悲恋ものです。

英語のタイトルは具体的、日本語は抽象的、という印象があります。そんな中で一つ、You Can’t Take it with You 「我が家の楽園」という名画があります。オールドファンには神様であるフランク・キャプラ監督の映画です。タイトルを直訳すると「あなたはそれをあなたとともに持って行けない」となりますが、言いたいのは、金や財産や全ては、死んだら、天国に持って行けない、という意味で、今楽しめるなら、楽しもうよ、という表現です。こういう言葉のセットフレーズもよくタイトルになります。

西部劇のタイトル

My Darling Clementine
High Noon
Magnificent Seven

クラシック時代から、西部劇に関しては、邦題は原題と違うものが多いです。

My Darling Clementine「荒野の決闘」High Noon「真昼の決闘」Magnificent Seven「荒野の七人」となります。原題には「荒野」も「決闘」も入っていません。日本人にこれは「西部劇」だと説明が省けるので良かったかもしれません。「私の可愛いクレメンタイン」「正午」「すごい七」ならどんな映画だか分かりません。

Butch Cassidy and the Sundance Kidが「明日に向かって撃て!」です。人の名前よりも「撃て」が入って、アクション物っぽい感じを出しています。

原題は具体的、邦題は抽象的、という感じがします。ただ、The Man Who Shot Liberty Valanceは「リバティ・バランスを射った男」と直訳です。配給会社が逆を行く方針をとった感じがします。「復讐の荒野」とかでも、まぁ、行けそうですけど。

しかし、マカロニウエスタンというイタリア製西部劇ブームがやってくると、この傾向が極まります。もちろん、イタリア語のタイトルですから、原題の意味は分かりませんが、英語のタイトルはそのまま訳しているようで、原題の意味はそれを見れば分かります。「荒野」「ガンマン」「夕陽」「銃」「用心棒」とかどこにもありません。

荒野の用心棒
夕陽の用心棒
続・夕陽の用心棒/地獄の決闘
続・荒野の用心棒

A Fistful of Dollars
For a Few More Dollars
The Good, the Bad, the Ugly
Django

という英語のタイトルです。「一握りのドル」「もう少し多くのドルのために」「良い人、悪い人、醜い人」「ジャンゴ」が直訳です。邦題は、配給会社のやりたい放題です。調べると、配給会社ごとに邦題に特徴がつけられていたようです。東和は「用心棒」、ユナイトは「ガンマン」、ヘラルドは「無頼」、松竹は「一匹狼」などです。マカロニウエスタンなら何でも人が映画館に集まった時代だったんですね。

邦題に一言いわせてもらいたいもの集合

「ロード・オブ・ザ・リング」 The Lord of the Rings 

原題にそったような邦題ですが、微妙な変更。冠詞のThe が省略されたり、複数形が無視されたり、よくあることです。ただし、映画の内容を知っている人は、ここが複数形でなければならないことはお分かりでしょう。私はどうもこのタイトルに居心地が悪い。さらに、世間では、ロードを「道」だと思っている人も多いのでは無いでしょうか。「指輪の道」だと。確かに、指輪を運ぶ、話ではあるので、疑問も湧かないかもしれません。しかし、「(複数ある)指輪の王」が直訳です。road を二重母音の発音通りに「ロウド」とカタカナ表記をしないことも背景にあります。

「遊星からの物体X」 The Thing

「The Thing」「その物」って、シンプル過ぎて、恐怖感を与えるのには良いかもしれません。ホラーはシンプルでミステリーにということでしょうか?邦題は「遊星からの物体X」となんとも日本の特撮映画風で、これはこれで良いかもしれない。もともと The Thing は The Thing from Another World という映画のリメークで、元の映画の邦題が「星よりの物体X」という細かな違いがあります。ここも面白い。

調べると、「より」の方が文語調である、とか。フーン、という感じです。

「大災難P.T.A」 Planes, Trains & Automobiles

PTAが学校で酷い目にあう、という、邦題だけみて見れば、そう思ってしまう。私もそうでした。しかし、原題は「飛行機、列車、自動車」と抽象的だ。映画を見れば、トラブルで目的地に簡単に到着できず、交通機関を工夫して乗り切る、という話で、なるほど、となります。

私の好きなスティーヴ・マーティンが出るコメディ。監督はジョン・ヒューズ、「ホームアローン」を作った人です。だから、面白い。

「バス男」 Napoleon Dynamite

ネットとかで「変な邦題」で見ていると、必ずこの映画の邦題が話題になっています。確かに、最低だ。内容が全く違うので、詐欺、と言われたことでしょう。

今では原題どおりで「ナポレオン・ダイナマイト」に変えているから、いろいろと非難されたのでしょうね。前のままの方がかえって記憶に残っていいのに、とも思います。

公開時の状況を知らない人に説明しておきます。

日本では「電車男」というオタクのダサい少年がハッピーになるというロマンスの本/映画があり、大ヒットしました。

この映画、主人公のダイナマイト君、別に恋愛をするでもなく、淡々と高校生しています。あるある映画、という感じですが、ダサいという微かな共通点で、豪快に邦題をつけています。

映画は、私的には、面白かったです。

「いまを生きる」 Dead Poets Society

日本語は抽象、英語は具体、の例です。原題は「死んだ詩人クラブ」のような感じです。一方、「いまを生きる」は映画自体のテーマです。Carpe Diem とラテン語がでて、Seize the Dayという英語が出てきて、「いまを生きる」という日本語訳が出ます。

保守を嫌う、教師の言葉です。そこから、話が大きく動いていきます。

「机の上に立つ」先生の話です。見て下さい。

「ワイルドスピード」 Fast & Fury 

「速くて激怒している」ということだが、カタカナ語にしといても良かったかも。人口に膾炙すれば、なんとなく重みがでてくるものですが。邦題の方が言いやすいかもしれません。映画の内容にも合っているかも。

そもそも、旧日本車をぶっ飛ばす映画だったのが、007のような世界を股にかける大アクション映画になりました。

「ランボー」 First Blood  

最初この原題とランボーというのが結びつきませんでした。公開当時にはインターネットとかマニアックな書籍とか、それを説明するものはありませんでした。わりと、ずっと謎でした。今では、調べれば、「先制攻撃での出血」だと分かります。

つまり、そっちが攻撃して血を流したんだ、だから、やり返す!と言いたかったのでしょう。こっちは悪くないモン、暴れるけど、という映画でした。

邦題つける人も、直訳無理だな、と思ったことでしょう。今なら「十倍返し」的なのでできそうです。

「アナと雪の女王」 Frozen

まぁ、二つが違うこと。邦題もヒットしたから、これで良かったのでしょう。「凍結」では、ホラー映画風になりますね。カタカナの「フローズン」だと、今で言うフラペチーノ的なシャーベットドリンクみたいですし。

「愛と青春の旅立ち」 An Officer and A Gentleman

もう、邦題がベタベタで濃過ぎて。今だと、笑われそうで。でも、公開当時は、何の違和感もなかった。恋愛映画でした。今でも主題歌は、よく聴きます。新郎新婦入場でグッドな歌のチョイスになっています。

「士官と紳士」という意味にはなりますが、だから、何?という感じです。ここは、「士官たるもの、紳士たれ」みたいな意味で使われています。

士官候補生が立派になるロマンス、ということです。ロマンス映画好きならば、お薦めです。

「アラバマ物語」 To Kill a Mockingbird

日本語は抽象、英語は具体、です。意味は「マネシツグミを殺すこと」

映画は、アメリカ映画でも、最高のヒーローと言われるアティカス弁護士の正義を通す話です。アメリカ人の心の映画であるでしょう。

話の中で、「害を及ばさない、マネシツグミを殺すことは罪だ」という台詞から来ています。不実の罪の黒人を救おうと奮闘する弁護士の話です。

「〇〇物語」というのは日本語のタイトルでよく使われていますから、こんな感じでつけたのでしょうね。タイトルは曖昧ですが、内容勝負、ってところで、名前をつけたのでしょう。

「博士の異常な愛情」 Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb

原題が長すぎて、寿限無か、という感じで担当者はつけたのでしょうね。「ストレンジラブ博士:私は悩むことをやめ、水爆を好きになった話」くらいの直訳です。

映画の内容を長々と説明しているタイトルは他には思いつきません。タイトルは簡略に、の逆を攻めたのでしょうか、天才スタンリー・キューブリック監督のやりそうなことです。

英語的に 「learn to 不定詞」が出ています。「〜することを学ぶ」というより「いろいろ学んで、〜できるようになる」という感じの熟語です。

「死霊の盆踊り」 Orgy of the Dead

ファンには古今東西最低最悪の映画として、逆に有名で、それで、怖いもの見たさ(ホラー映画という観点ではなく、こんな最低なものを見る自分が怖いホラー)で、みんな見てしまう、という。で、見てすぐに、頭が痛くなって、止めてしまう。裸の女性がリズム感なくただ踊っています。ウーン、と後悔の念に襲われて、唸るしかない。

しかし、それを、この邦題にした人の才覚を褒めることにしましょう。ほんと、これ以上の表現はないような気がします。この映画を見た誰もが、永遠にこのタイトルを忘れないでしょう。

「死人の乱交パーティー」が直訳でしょうが、邦題の方が勝ちです。

まとめ

英語の話というよりも、映画の話になりました。しかし、映画の単語を見ていると、それはそれで、単語力の鍛錬にもなると思います。

[EnglishMonger 英語屋さん]のフロントページへ飛べます。英語に関する色々を集めてHPを作っています。クリックして下さい。→クリック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です