[EnglishMonger 英語屋さん]

日本語の俳句が、世界進出しています。私は数十年前に Steven King の小説に、授業で俳句を書いてあるシーンを見て驚いたことがあります。今や、世界的な組織もあって、人気がでているようです。

Haiku のルール

英語の Haiku にもルールがあるようです。国際俳句交流協会(Haiku International Association) https://www.haiku-hia.com/ から抜き出してきました。

1. 文頭であっても大文字は用いず、文末にピリオドを打たない
2. 3行で書くこと
3. 3行それぞれの音節は2-3-2くらいをめどにすること
4. 一句の中に切れ字を入れること。英語俳句では行末に ――(ダッシュ)や : (コロン)を置いて感動の余韻を表します
5. できるだけ "I" を使わない
6. be 動詞、冠詞、前置詞は省略してよい
7. 時制は現在形を用いる
8. 正確な文法に必ずしもこだわらなくてよい
9. 季節感を盛り込む

芭蕉の名句を英訳

芭蕉の名句の英訳を紹介。国際俳句交流協会で紹介されている訳と私の拙訳を紹介します。私は上記ルールに則って訳してみました。

「山路来て何やらゆかしすみれ草」

協会紹介訳
coming through a mountain path,
somehow graceful_
violets
拙訳
in mountain path
impressed how modest
those violets―

「古池や蛙飛びこむ水の音」

協会紹介訳
by an ancient pond
a frog leaping into it
the sound of water
拙訳
old pond― 
splash sound 
frog jump in

「閑さや岩にしみ入蝉の聲」

協会紹介訳
the stillness_
the voice of a cicada
seeping into the crags
拙訳
quietness:  
sinking into rocks
cicada chirp

「夏草や兵どもが夢の跡」

協会紹介訳
the summer grasses:
the remains of 
warriors' dreams
拙訳
field in summer: 
ancient warriors 
fought for dream

「荒海や佐渡によこたふ天河」

協会紹介訳
the rough sea_
lying over to Sado,
the milky way
拙訳
rough sea―
milky-way lying over
Sado island 

「旅に病で夢は枯野をかけ廻る」

協会紹介訳
ill in bed on this journey,
my dreams wander around
withered fields
拙訳
fallen ill while traveling  
my dream runs around
withered fields

実際のHaiku作品

実際の作品をTHE SOCIETY OF CLASSICAL POETSというホームページで見てみたいと思います。その中の某コンテスト結果は発表、The 22 Best Haiku of 2022 より受賞作を見てみたいと思います。作品ー英語の訳と並べて、さらに、それを五七五に強引にするとどうなるか、というのまで示したいと思います。

a cicada’s husk
grandfather in his best suit
hands folded, eyes closed
蝉の抜け殻
一番良い服の祖父
手を組み、目を閉じ
蝉の殻
祖父が晴れ着で
祈っている

New blooms on black trees
veiled in quiet bone-white fog
spring’s dirge to winter
新しい花、黒い木
真っ白な霧に隠され
春が冬に哀悼の歌
白い霧
黒い木に花
春が来ぬ

blossoms of the spring
two high school students fighting
for the window seat
春の花
二人の高校生が喧嘩している
窓側の席を求めて
春の花
窓席争う
高校生
Delicate white wings
dance over sun-kissed petals
tipsy with nectar
繊細な白い羽
太陽がキスする花弁の上で踊る
花の蜜にほろ酔い
白い蝶
陽浴びた花に
蜜で酔う
Yes, there is a dove
sitting in a tall oak tree.
I hear a high coo.
そう、鳩がいる
高い樫の木の上にいる
高く鳴く声を聞く
鳩一羽
樫の天辺
高い声
Cerulean sky
above yellow sunflowers
The smell of burning
セルリアンブルーの空
黄色のひまわりの上
燃える匂い
空の濃さ
黄色向日葵
陽が薫る
Turtle, a green leaf
blown slowly over the ground
by a lazy breeze
海亀、緑の葉
地面の上にゆっくりと吹き飛ばされる
緩い風に
海亀は
風に揺られる
木の葉かな

まとめ

こうやって、英語の俳句と日本語の訳とをみてみると、同じ長さの文(読めば同じ長さ)で、情報量がかなり違うことが分かります。英語の直訳をかなり削らないと五七五になりません。日本語のシンプルさから景色を生む強さに感心します。日本語は削って削って文を作り、その簡単さから、読書が豊かなイメージを広げる、という共通文学精神があるということですね。

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